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東京地方裁判所 平成9年(ワ)1959号 判決 1999年3月26日

東京都台東区柳橋二丁目一四番四号

原告

株式会社名和里商事

右代表者代表取締役

北山英博

右訴訟代理人弁護士

加藤廣志

安孫子英彦

右訴訟復代理人弁護士

小松治郎

東京都渋谷区恵比寿西一丁目一〇番七号

YUKIビル

被告

株式会社ワールドプロジェクト

右代表者代表取締役

松下茂雄

東京都中央区東日本橋三丁目九番一六号

被告

大山ビューテイーサプライズ株式会社

右代表者代表取締役

大山俊雄

主文

一  被告株式会社ワールドプロジェクトは、別紙物件目録一及び二記載のアイマスクを製造、販売し又は販売のために展示してはならない。

二  被告株式会社ワールドプロジェクトは、別紙物件目録一及び二記載のアイマスクを廃棄せよ。

三  被告大山ビューテイーサプライズ株式会社は、別紙物件目録一記載のアイマスクを販売し又は販売のために展示してはならない。

四  被告大山ビューティーサプライズ株式会社は、別紙物件目録一記載のアイマスクを廃棄せよ。

五  被告株式会社ワールドプロジェクトは、原告に対し、金六四八万一九二〇円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告大山ビューテイーサプライズ株式会社は、原告に対し、金一一万〇一六〇円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  本件訴え中被告株式会社ワールドプロジェクトに対し別紙物件目録一及び二記載のアイマスクの製造設備の廃棄を求める請求に係る部分を却下する。

八  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

九  訴訟費用は、これを八分し、その二を被告株式会社ワールドプロジェクトの負担とし、その一を被告大山ビューティーサプライズ株式会社の負担とし、その余を原告の負担とする。

一〇  この判決は、第一項ないし第六項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告株式会社ワールドプロジェクトは、別紙物件目録一及び二記載のアイマスクを製造、販売し又は販売のために展示してはならない。

二  被告株式会社ワールドブロジェクトは、別紙物件目録一及び二記載のアイマスク及びその製造設備を廃棄せよ。

三  被告大山ビユーアイープライズ株式会社は、別紙物件目録一記載のアイマスクを販売し又は販売のために展示してはならない。

四  被告大山ビユーティーサプライズ株式会社は、別紙物件目録一記載のアイマスクを廃棄せよ。

五  被告株式会社ワールドプロジェクト及び被告大山ビユーティーサプライズ株式会社は、原告に対し、連帯して金五四万円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

六  被告株式会社ワールドプロジェクトは、原告に対し、金二二五四万円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

七  被告大山ビユーティーサプライズ株式会社は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成九年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  争いのない事実等

1  原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」といい、本件発明に係る明細書を「本件明細書」という。)を有する(争いがない)。

特許番号 第二〇二九九五三号

発明の名称 アイマスク

出願年月日 平成五年二月一五日

出願公告年月日 平成七年六月五日

登録年月日 平成八年三月一九日

特許請求の範囲 別添特許公報(以下「本件公報」という。)の特許請求の範囲、請求項2のとおり。

2  本件発明の構成要件を分説すると、次のとおりである(以下、本件発明の構成要件は、「構成要件ア」のように、記号により特定して記載する。)

(争いがない)。

ア 複数の小孔からなる眼部を有し柔軟材のシートからなる本体部を備える。

イ 前記本体部の裏面に設けられ弾性材からなる裏面当接体を備える。

ウ 前記裏面当接体の外縁部は前記本体部の裏面外縁部に設けられている。

エ 前記裏面当接体の内縁は前記本体部とは非接続の自由縁部を構成している。

オ 前記裏面当接体は輪状をなしている。

カ アイマスクである。

3  被告株式会社ワールドプロジエクト(以下「被告ワールドプロジェクト」という。)は、業として別紙物件目録一及び二記載のアイマスク(以下、別紙物件目録一記載のアイマスクを「被告製品(一)」、別紙物件目録二記載のアイマスクを「被告製品(二)」といい、被告製品(一)と被告製品(二)を合わせて「被告各製品」という。)を製造、販売しており、被告大山ビューティーサプライズ株式会社(以下「被告大山」という。)は、業として被告製品(一)を販売している(ただし、別紙物件目録一の「構造の説明」3のうち「右裏面当接体の内縁部(4B)は、右本体部とは接合していない。」との部分及び別紙物件目録二の「構造の説明」3のうち「右裏面当接体の内縁部(9B)は、右本体部とは接合していない。」との部分は争いがある。他は争いがない。)。

4  被告各製品は、いずれも、構成要件ア、イ、ウ及びカを充足する(争いがない)。

5  原告は、本件特許権を実施している(甲第五号証、弁論の全趣旨)。

二  原告の被告ワールドプロジェクトに対する請求は、被告各製品の製造、販売が本件特許権を侵害するものであるとして、本件特許権に基づき、被告各製品の製造、販売又は販売のための展示の差止め、被告各製品及びその製造設備の廃棄を求め、補償金請求権に基づき、被告大山と連帯して金五四万円及びこれに対する請求の後である平成九年三月一同から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求め、不法行為に基づく損害賠償として金二二五四万円及びこれに対する不法行為の後である平成九年三月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

原告の被告大山に対する請求は、被告製品(一)の販売が本件特許権を侵害するものであるとして、本件特許権に基づき、被告製品(一)の販売又は販売のための展示の差止め、被告製品(一)の廃棄を求め、補償金請求権に基づき、被告ワールドプロジェクトと連帯して金五四万円及びこれに対する請求の後である平成九年三月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求め、不法行為に基づく損害賠償として金五〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成九年三月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

三  争点

1(一)  被告製品(一)は、構成要件エを充足するか。

(二)被告製品(二)は、構成要件エを充足するか。

2(一)  被告製品(一)は、構成要件オを充足するか。

(二)  被告製品(二)は、構成要件オを充足するか。

3  被告ワールドプロジェクトは、本件特許権につき先使用による通常実施権を有するか。

4  原告の補償金請求は認められるか。

5  損害額はいくらか。

四  争点に関する当事者の主張

1(一)  争点1(一)について

(1) 原告の主張

被告製品(一)は、裏面当接体の内縁部が本体部とは接合していないから、構成要件エを充足する。

(2) 被告らの主張

被告製品(一)の裏面当接体は、外縁部、内縁部が一体をなして本体部に接続しているから、構成要件エを充足しない。

(二)争点1(二)について

(1) 原告の主張

被告製品(二)は、裏面当接体の内縁部が本体部とは接合していないから、構成要件エを充足する。

(2) 被告らの主張

被告製品(二)の裏面当接体は、外縁部、内縁部が一体をなして本体部に接続しているから、構成要件エを充足しない。

2(一)  争点2(一)について

(1) 原告の主張

被告製品(一)の裏面当接体は、別紙物件目録一図1の4に示されるような形状であり、これは輪状ということができるから、被告製品(一)は構成要件オを充足する。

(2) 被告らの主張

被告製品(一)の裏面当接体は、形状が輪状とは全く異なるから、構成要件オを充足しない。

本件発明は、両眼用アイマスクに関するものではなく、単眼用アイマスクに関するものであるから、両眼用アイマスクである被告各製品は本件特許権を侵害しない。

(二)  争点2(二)について

(1) 原告の主張

被告製品(二)の裏面当接体は、別紙物件目録二図7の9に示されるような形状であり、これは輪状ということができるから、被告製品(二)は構成要件オを充足する。

(2) 被告らの主張

被告製品(二)の裏面当接体は、形状が輪状とは全く異なるから、構成要件オを充足しない。

3  争点3について

(一) 被告らの主張

被告ワールドプロジェクトは、本件発明につき特許出願がされたことを知らず、出願の内容、特許請求の範囲も知らなかったから、特許法七九条の「特許出願に係る発明の内容を知らないで」という要件を満たす。

被告ワールドプロジェクトは、原告と本件発明を共同開発したものであるから、特許法七九条の「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して」という要件を満たす。

被告ワールドプロジェクトは、本件特許権の出願前である平成四年一一月ころから、被告各製品の見本の製作、流通ルートの決定、流通を確保するための契約の締結、消費者への宣伝等を行っていたから、特許法七九条の「特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者」という要件を満たす。

したがって、被告ワールドプロジェクトは、本件特許権について先使用による通常実施権を有する。

(二) 原告の主張

被告らの主張に係る事実は否認し、主張は争う。

原告と被告ワールドプロジェクトらは、平成四年一二月ころ、アイマスクにつき、原告が被告ワールドプロジェクトに卸し、同被告がこれをジャパンシステムプロモーションに卸し、ジャパンシステムプロモーションが東販商事に卸し、東販商事が書店に卸し、書店が小売をするという流通をさせることになり、そのための契約を締結した。そして、原告は、平成五年二月上旬以降まで、被告ワールドプロジェクトに対し、被告各製品とは異なり、裏面当接体が本体部に全面圧着されたアイマスクスクを納入していた。その後、原告は、裏面当接体の内縁が本体部に接合していない、本件発明の実施品であるアイマスクを被告ワールドプロジェクトに納入した。

4  争点4について

(一) 原告の主張

(1) 本件特許は、平成六年八月三〇日、出願公開された。原告は、被告ワールドプロジェクトに対し、内容証明郵便により警告書を発送し、右警告書は、同年一一月二八日、同被告に到達した。原告は、被告大山に対し、内容証明郵便により警告書を発送し、右警告書は、平成七年二月一三日、同被告に到達した。本件特許は、同年六月五日、出願公告された。

(2) 被告ワールドプロジェクトは、原告の警告書が被告らに到達した後、本件特許が出願公告されるまでに、被告製品(一)を六万個製造、販売し、被告大山は、右六万個のうち三万個を被告ワールドプロジェクトから仕入れ、販売した。被告製品(一)を小売店に出荷する際の販売価格は、一個三六〇円であり、本件特許権の実施料は右販売価格の五パーセントであるから、実施料は一個当たり一八円である。したがって、被告ワールドプロジェクトが原告に支払うべき補償金の額は、一八円に六万個を乗じた一〇八万円であり、被告大山が原告に支拡うべき補償金の額は、一八円に三万個を乗じた五四万円である。被告ワールドプロジェクトが支払うべき補償金のうち五四万円は、被告大山が支払うべき補償金と連帯債務となる。

(二) 被告らの主張

(1) 原告の主張(1)の事実は認める。

(2) 原告の主張(2)のうち、被告ワールドプロジェクトが、原告の警告書が到達した平成六年一一月二八日から本件特許が出願公告された平成七年六月五日までに被告製品(一)を二万四一〇九個製造、販売したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

被告大山は、平成六年一一月二八日から平成七年六月五日までに被告製品(一)を二一六〇個販売した。被告ワールドプロジェクトの販売価格は、一個三三〇円以上である。

5  争点5について

(一) 原告の主張

本件特許が出願公告された後、被告ワールドプロジェクトは、被告製品(一)を一〇万個製造、販売し、被告製品(二)を五万個製造、販売し、被告大山は、被告ワールドプロジェクトが製造、販売した被告製品(一)のうち五万個を被告ワールドプロジェクトから仕入れ、販売した。

被告ワールドプロジェクトの被告各製品の販売価格は、一個三六〇円であり、一個当たり一八〇円の製造費がかかるので、被告ワールドプロジェクトの販売利益は、一個当たり、右三六〇円から一八〇円を差し引いた残額の一八〇円である。被告大山が被告製品(一)の販売により得る利益は、一個当たり一〇〇円である。

したがって、被告ワールドプロジェクトが、本件特許の出願公告後、被告製品(一)の販売により得た利益の額は、一八〇円に一〇万個を乗じた一八〇〇万円であり、被告製品(二)の販売により得た利益の額は、一八〇円に五万個を乗じた九〇〇万円であり、右一八〇〇万円と九〇〇万円の合計の二七〇〇万円が、被告ワールドプロジェクトによる本件特許権の侵害により原告が被った損害の額と推定され、原告は、被告ワールドプロジェクトに対し、右二七〇〇万円の一部である二二五四万円を請求する。被告大山が、本件特許権の出願公告後、被告製品(一)の販売により得た利益の額は、一〇〇円に五万個を乗じた五〇〇万円であり、これが、被告大山による本件特許権の侵害により原告が被った損害の額と推定される。

(二) 被告らの主張

原告の主張のうち、本件特許の出願公告後である平成七年六月六日から平成九年二月四日までに、被告ワールドプロジェクトが、被告製品(一)を二万六三六五個製造、販売し、被告製品(二)を五万四六五九個製造、販売し、被告大山が、被告ワールドプロジェクドが製造、販売した被告製品(一)のうち六四八〇個を同被告から仕入れ、販売したことは認め、その余の事実は否認し、主張は争う。

被告ワールドプロジェクトの被告各製品の販売価格は、一個三三〇円以上であり、製造原価及び付随工賃等の直接経費を含む費用は一個当たり二五〇円以上である。被告大山が被告製品(一)の販売により得る利益(販売価格から仕入原価及び付随送料等の直接経費を控除した利益額)は、一個当たり一七円以内である。

第三  当裁判所の判断

一1  争点1(一)について

検甲第一号証、検甲第二号証及び弁論の全趣旨によると、被告製品(一)の裏面当接体(4)は、本体部(5)の裏面に設けられており、本体部の裏面外縁部(5A)と裏面当接体の外縁部(4A)は接合しているが、裏面当接体の内縁部(4B)は、本体部とは接合していないことが認められる。

したがって、裏面当接体の内縁は本体部とは非連続の自由縁部を構成しているということができ、被告製品(一)は構成要件エを充足する。

2  争点1(二)について

検甲第三号証及び弁論の全趣旨によると、被告製品(二)の裏面当接体(9)は、本体部(10)の裏面に設けられており、本体部の裏面外縁部(10A)と裏面当接体の外縁部(9A)は接合しているが、裏面当接体の内縁部(9B)は、本体部とは接合していないことが認められる。

したがって、裏面当接体の内縁は本体部とは非連続の自由縁部を構成しているということができ、被告製品(二)は構成要件エを充足する。

二1  争点2(一)について

(一) 「輪」は、「長いものをまげて円くしたもの」(広辞苑第四版二七四七ページ)を意味するから、「輪状」とは、長いものをまげて円くしたもの及びそれに近い形状のものをいうと解される。ところで、甲第二号証によると、本件明細書の実施例には、「1裏面当接体」として、アイマスクの両眼の回りを囲む、横倒しのBの文字に似た平面形状の裏面当接体が示されていることが認められるが、裏面当接体の右平面形状は、切れ目のない環状をなしており、半円形を二個連接したとも見られるものであり、「輪状」といい得るものである。そして、本件明細書には、「この裏面当接体1は輪状の袋状に形成された弾性材からなる外皮1aとこの外皮1a内に設けられた弾性部材1bとから構成されている。」と記載されている(本件公報の三欄三三行ないし三五行)。したがって、構成要件オの「輪状」は、本件明細書の実施例の裏面当接体の右平面形状を含むものである。

検甲第一号証、検甲第二号証及び弁論の全趣旨によると、被告製品(一)の裏面当接体(4s)の平面形状は、本件明細書の実施例の裏面当接体の平面形状と同様の横倒しのBの文字に似た形状であり、上部の横方向の直線的部分及び左右の端部において、本件明細書の実施例の裏面当接体の平面形状よりも更に丸みを帯びていることが認められる。

したがって、被告製品(一)の裏面当接体は、「輪状」であるということができ、被告製品(一)は、構成要件オを充足する。

(二) 被告らは、本件発明は両眼用アイマスクに関するものではなく、単眼用アイマスクに関するものであるから、両眼用アイマスクである被告各製品は本件特許権を侵害しないと主張する。

しかし、甲第二号証によると、本件明細書には、本件発明を単眼用アイマスクに限定する旨の記載はないものと認められる。また、甲第二号証により認められる本件明細書の特許請求の範囲、作用(「本発明によるアイマスクにおいては、本体部に設けられた裏面当接体の外縁部のみが本体部に結合して設けられ、その内縁は本体部とは結合せずに自由縁部となって本体部から浮いているため、アイマスクを顔面に装着した場合、顔面の凹凸に応じてフイットしやすく、顔面への弾性力が従来よりも大きくなり、長時間の使用においても疲れないアイマスクを得ることができる。」三欄一九行ないし二五行)、発明の効果(「本発明によるアイマスクは、以上のように構成されているため、従来よりも裏面当接体の弾性力が大幅に向上し、顔面へのフィット性、追随性が良好となり、長時間の使用においても何らの疲れもなく使用できるものである。」四欄二二行ないし二六行)の各記載は、単眼用アイマスク及び両眼用アイマスクのいずれにも当てはまり得るということができる。さらに、甲第二号証によると、実施例について、本件明細書には、「複数の小孔3からなる一対の眼部30(片方のみの場合もある)を有する本体部2」(本件公報三欄三一行ないし三二行)と記載されており、単眼用アイマスク及び両眼用アイマスクの両方を対象とする旨が明らかにされている上、実施例を示す図(本件公報の図1)は、両眼用アイマスクの形状を示していることが認められる。

したがって、本件発明は、両眼用アイマスクをもその対象に含むものであり、被告らの右主張は、採用することができない。

2  争点2(二)について

検甲第一号証ないし第三号証及び弁論の全趣旨によると、被告製品(二)の裏面当接体(9)の平面形状は、被告製品(一)の裏面当接体(4)の平面形状と同じであると認められる。

そうすると、被告製品(一)の裏面当接体は、右1(一)のとおり「輪状」をなしているから、被告製品(二)の裏面当接体は、被告製品(一)の裏面当接体と同じく「輪状」をなしているということができ、被告製品(二)は、構成要件オを充足する。

三  以上によると、前記第二の一4のとおり、被告各製品はいずれも構成要件ア、イ、ウ及びカを充足し、右一1、2、二1、2のとおり、被告各製品はいずれも構成要件エ及びオを充足し、したがって、被告各製品は、いずれも本件発明の構成要件をすべて充足する。

四  争点3について

甲第一号証、第二号証及び第五号証によると、本件発明の発明者は原告代表者であることが認められる。被告らは、被告ワールドプロジェクトが原告と本件発明を共「同開発したと主張するが、右共同開発の事実を認めるに足りる証拠はない上、仮にその主張のとおり共同開発したとすれば、被告ワールドプロジェクトは、本件発明の開発に携わっていたことになり、当然、特許出願に係る発明の内容を知っていたことになるから、「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし」たという要件に該当しないし、「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得し」たという要件にも該当しない。

したがって、争点3における被告らの主張は、採用することができない。

五  争点4について

1  本件特許は、平成六年八月三〇日、出願公開されたこと、原告は、被告ワールドプロジェクトに対し、内容証明郵便により警告書を発送し、右警告書は、同年一一月二八日、同被告に到達したこと、原告は、被告大山に対し、内容証明郵便により警告書を発送し、右警告書は、平成七年二月一三日、同被告に到達したこと、本件特許は、同年六月五日、出願公告されたことは、いずれも当事者間に争いがない。

甲第三号証及び第四号証の各一、二によると、原告が被告ワールドプロジェクトに対して送付した警告書ば、「貴社は、アイマスクLOOKなる名称の商品を製造・販売されておりますが、右アイマスクLOOKの技術は、当社が平成五年二月一五日出願し、平成六年八月三〇日公開(特許出願公開番号 特開平六一二三七九五五)された技術に抵触するものであると思料します。よって、当社は、特許法第六五条の三に基づき、本書到達後貴社が製造、販売される前記商品につき、通常受けるべき金銭の額に相当する補償金を請求いたしますので、右通知いたします。」という文面であり、被告大山に対して送付した警告書は、「貴社は、アイマスクルックなる名称の商品を販売されておりますが、右アイマスクルックの技術は、当社が平成五年二月一五日出願し、平成六年八月三〇日分開(特許出願公開番号 特開平六一二三七九五五)された技術に抵触するものであると思料します。よって、当社は、特許法第六五条の三に基づき、本書到達後貴社が製造、販売される前記商品につき、通常受けるべき金銭の額に相当する補償金を請求いたしますので、右通知いたします。」という文面であったことが認められる。

2  原告が被告ワールドプロジェクト及び被告大山に送付した警告書の文面は、右1認定のとおりであり、出願日、出願公開日、公開番号が書かれているが、特許請求の範囲などの発明の内容に関する記載はなく、その他、原告が被告らに対して、公開に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたと認めるに足りる証拠はない。したがって、原告が被告らに対し、特許法六五条の三(平成六年法律第一一六号による改正前のもの。以下、同じ。)第一項が定める「特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をした」ものと認めることはできない。

3  また、特許法六五条の三第一項は、「出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って出願公告前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。」と規定するが、右にいう「出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って」とは、特許出願に係る発明の内容を知り、かつそれが出願公開になっていることを知ることをいうと解される。

しかるところ、被告ワールドプロジェクトが(出願公告前に、本件発明の内容を知り、かつそれが出願公開になっていることを知っていたと認めるに足りる証拠はない。

4  したがって、補償金請求は認められない。

六  争点5について

被告ワールドプロジェクトが、本件特許の出願公告後である平成七年六月六日から平成九年二月四日までに被告製品(一)を二万六三六五個製造、販売し、被告製品(二)を五万四六五九個製造、販売し、被告大山が、被告ワールドプロジェクトが製造、販売した被告製品(一)のうち六四八〇個を同被告から仕入れ、販売したことは、当事者間に争いがない。弁論の全趣旨によると、被告ワールドプロジェクトの被告各製品の販売価格は一個三三〇円、製造原価その他の費用は一個当たり二五〇円であり、被告ワールドプロジェクトが被告製品(一)の製造、販売により得る利益は、一個当たり、右三三〇円から二五〇円を差し引いた残額の八〇円であるごと、被告大山が被告製品(一)の販売により得る利益は、一個当たり一七円であること、以上の各事実が認められる。

右当事者間に争いのない事実及び認定事実によると、被告ワールドプロジェクトが被告製品(一)の販売により得た利益の額は、一個当たりの利益である八〇円に販売個数である二万六三六五個を乗じた二一〇万九二〇〇円、被口告製品(二)の販売により得た利益の額は、一個当たりの利益である八〇円に販売個数である五万四六五九個を乗じた四三七万二七二〇円であり、被告ワールドプロジェクトが被告各製品の販売により得た利益の額は、右二一〇万九二〇〇円と四三七万二七二〇円の合計額である六四八万一九二〇円であることが認められ、右六四八万一九二〇円は、原告が被告ワールドプロジェクトによる本件特許権の侵害によって受けた損害の額と推定される。また、右当事者間に争いのない事実及び認定事実によると、被告大山が被告製品(一)の販売により得た利益の額は、一個当たりの利益である一七円に販売個数である六四八〇個を乗じた一一万〇一六〇円であることが認められ、右一一万〇一六〇円は、原告が被告大山による本件特許権の侵害によって受けた損害の額と推定される。そして、右各推定を覆すに足りる証拠はないから、右各推定金額が損害の額と認められる。

七  原告は、被告ワールドプロジェクトに対し、被告各製品の製造設備の廃棄を求めるが、これは、特許法一〇〇条二項に基づいて侵害の行為に供した設備の除却を求めるものと解される。

しかし、本件のように単に被告各製品の製造設備と表示されているだけでは、いかなる設備がこれに該当するかを客観的に識別することができないから、このような請求は不特定といわざるを得ない。

したがって、右請求に関する部分については、原告の訴えを不適法として却下すべきである。

(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 中平健)

物件目録一

製品名 アイマスク

[図面の説明]

図1 裏面図

図2 表面図

図3 側面図

図4 図1のA-A線における断面図

図5 図1のB-B線における断面図

図6 図1のC-C線における拡大断面図

[構造の説明]

1 本体部(5)、裏面当接体(4)及びゴム紐(d)によって構成される。

2 右本体部は、柔軟材のシートからなる。その形状は図2のとおりである。

この本体部には、この本体部外周の直線状になっている方を上に、波形曲線を描いている方を下にして、アイマスクとして顔面に装着した場合の、ちょうど両眼が位置するあたり(7)に、左右各五個、合計一〇個の小孔(6)が存在する。この左右各五個の小孔は、一個を中心に他の四個が上下左右の等距離に位置する形で存在する。

3 右裏面当接体は、弾性材からなる。その形状は、図1のとおりである。

この裏面当接体は、右本体部の裏面に設けられている。右本体部の裏面外縁部(5A)と右裏面当接体の外縁部(4A)は接合している。右裏面当接体の内縁部(4B)は、右本体部とは接合していない。

4 右ゴム紐は、伸縮性素材からなる。右ゴム紐は、右本体部の左右の両端に各一本合計二本あり、右本体部の両端に位置する左右各二個の孔(k)を通り、紐の両端は結ばれ(l)、輪をなしている。

この紐の結び目のところには、貫通する一個の孔を有する玉(m)が、その孔に紐を通された形で左右各一個合計二個存在する。

〔符号の説明]

4 裏面当接体

4A 裏面当接体の外縁部

4B 裏面当接体の内縁部

4a 裏面当接体外皮

4b 裏面当接体弾性部材

5 本体部

5A 本体部の裏面外縁部

6 小孔

7 ちょうど両眼が位置するあたり

d ゴム紐

k 本体部の両端に位置する孔

l 紐の両端

m 孔を有する玉

図1

<省略>

図2

<省略>

図3

<省略>

図4

<省略>

図5

<省略>

図6

<省略>

物件目録二

製品名 アイマスク

〔図面の説明]

図7 裏面図

図8 表面図

図9 側面図

図10 図7のA-A線における断面図

図11 図7のB-B線における断面図

図12 図7のC-C線における拡大断面図

[構造の説明]

1 本体部(10)、裏面当接体(9)及びゴム紐(e)によって構成される。

2 右本体部は、柔軟材のシートからなる。その形状は図8のとおりである。

この本体部には、この本体部外周の直線状にな.ている方を上に、波形曲線を描いている方を下にして、アイマスクとして顔面に装着した場合の、ちょうど両眼が位置するあたり(12)に、左右各九個、合計一八個の小孔(11)が存在する。この左右各九個の小孔は、五個が等間隔に横一直線上に並び、その五個の小孔のうち左かり数えて二書と四番目の小孔を中心にして上下に各一個合計四個の小孔が、右の五個の小孔の間隔と同じ間隔で配置される形で存在する。

3 右裏面当接体は、弾牲材からなる。その形状は、図7のとおりである。

この裏面当接体は、右本体部の裏面に設けられている。右本体部の裏面外縁部(10A)と右裏面当接体の外縁部(9A)は接合している。右裏面当接体の内縁部(9B)は、右本体部とは接合していない。

4 右ゴム紐は、伸縮性素材からなる。右ゴム紐は、右本体部の左右の両端に各一本合計二本あり、右本体部の両端に位置する左右各二個の孔(n)を通り、紐の両端は結ばれ(o)、輪をなしている。

この紐の結び目のところには、貫通する一個の孔を有する玉(p)が、その孔に紐を通された形で左右各一個合計二個存在する。

[符号の説明]

9 裏面当接体

9A 裏面当接体の外縁部

9B 裏面当接体の内縁部

9a 裏面当接体外皮

9b 裏面当接体弾性部材

10 本体部

10A本体部の裏面外縁部

11 小孔

12 ちょうど両眼が位置するあたり

e ゴム紐

n 本体部の両端に位置する孔

o 紐の両端

p 孔を有する玉

図7

<省略>

図8

<省略>

図9

<省略>

図10

<省略>

図11

<省略>

図12

<省略>

(19)日本国特許庁(JP) (12)特許公報(B2) (11)特許出願公告番号

特公平7-51138

(24) (44)公告日 平成7年(1995)6月5日

(51)lntCl A61F 9/04 識別記号 315 340 庁内整理番号 8119-4C 8119-4C FI 技術表示箇所

(21)出願番号 特願平5-64575

(22)出願日 平成5年(1993)2月15日

(65)公開番号 特開平6-237955

(43)公開日 平成6年(1994)8月30日

(71)出願人 592241652

有限会社名和里商事

東京都台東区柳橋2-22-11

(72)発明者 北山英博

東京都台東区柳橋2-22-11

審査官 和田志郎

(54)【発明の名称】 アイマスク

【特許請求の範囲】

【請求項1】 複数の小孔(3)からなる眼部(30)を有し柔軟材のシートからなる本体部(2)と、前記本体部(2)の裏面(Y)に設けられ弾性材からなる裏面当接体(1)とを備え、前記裏面当接体(1)の外縁部(1A)は前記本体部(2)の裏面外縁部(2A)に設けられ、前記裏面当接体(1)の内録は前記本体部(2)とは非接統の自由縁部(1B)を構成していることを特微とするアイマスク。

【請求項2】 前記裏面当接体(1)は輪状をなしていることを特徴とする請求項1記載のアイマスク。

【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】本発明はアイマスクに関し、特に、顔面に当接する裏面当接体の内縁を自由縁部とし、顔面との接合性及び追随性を向上させるための新規な改良に関する。

【0002】

【従来の技術】従来、用いられていたこの新規のアイマスクは、一般に、図4に示すように、裏面当接体1は本体部2に対してその全面が固定され、例えば、成形によって一体に構成されていた。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】従来のアイマスクは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、裏面当接体1の当接面全体が本体部2に一体接統されていたため、アイマスクとして顔面に装着した場合、この裏面当接体の柔軟性はその弾性のみであるため、種々形状の異なる人の顔面に追随することは極めて難しく、人によっては長時間アイマスクを装着すると、裏面当接体によって顔面が痛みを感じることもあり、例えば、海外旅行の機内において長時間使用することは困難な場合もあった。

【0004】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、顔面に当接する裏面当接体の内縁を自由縁部とし、顔面との接合性及び追随性を向上させるようにしたアイマスクを提供することを目的とする。

【0005】

【課題を解決するための手段】本発明によるアイマスクは、複数の小孔からなる眼部を有し柔軟材のシートからなる本体部と、前記本体部の裹面に設けられ弾性材からなる裏面当接体とを備え、この裏面当接体の外縁部は本体部の裏面外縁部に設けられ、裏面当接体の内縁は本体部とは非接の自由縁部をなす構成である。

【0006】さらに詳細には、前記裏面当接体は輪状をなす構成である。

【0007】

【作用】本発明によるアイマスクにおいては、本体部に設けられた裏面当接体の外縁部のみが本体部に結合して設けられ、その内縁は本体部とは結合せずに自由縁部となって本体部から浮いているため、アイマスクを顔面に装着した場合、顔面の凹凸に応じてフィットしやすく、顔面への弾性力が従来よりも大きくなり、長時間の使用においても疲れないアイマスクを得ることができる。

【0008】

【実施例】以下、図面と共に本発明によるアイマスクの好適な実施例について詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。図1から図3において符号1で示されるものは全体が柔軟性のシートよりなり複数の小孔3からなる一対の眼部30(片方のみの場合もある)を有する本体部2に設けられた裏面当接体であり、この裹面当接体1は輪状の袋状に形成された弾性材からなる外皮1aとこの外皮1a内に設けられた弾性部材1bとから構成されている。なお、眼部30は外を見るためのものである。

【0009】前記裏面当接体1の外縁部1Aは本体部2の裏面外縁部2Aに接着又は一体成形あるいは熱圧着等の何れかによって一体状に設けられており、この裏面当接体1の内縁は前記本体部2とは非接続の自由縁部1Bを構成している。

【0010】従って、この自由縁部1Bは本体的2とは離間して浮いた状態に構成され、従来のように本体部2に固定された構成と比較すると、その顔面10への装着時における弾性力は大幅に向上し、顔面10に対するフイット性、接合性、追随性が大きく向上する。なお、この裏面当接体1と本体部2との接統は、一体成形、二体による接着、熱圧着等による一体状構成の何れの手段でも可能である。

【0011】また、この本体部2の両端には一対ずつ貫通孔21が形成されこの貫通孔21に設けられた取付ひも(図示せず)により本体部2を顔面20に装着し、その中央に形成された凹部22に鼻が接合する構成である。

【0012】従って、前述の構成によるアイマスクを顔面20に装着すると、この裏面当接体1の弾性力が従来構成よりも大幅に向上しているため、顔面20へのフィット性、接合性、追随性に秀れ、従来とは比較できないほど、長時間使用が可能となった。なお、図2、3中、符号Xはアイマスクの表面、Yはその裏面を示す。

【0013】

【発明の効果】本発明によるアイマスクは、以上のように構成されているため、従来よりも裏面当接体の弾性力が大幅に向上し、顔面へのフィット性、迫随性が良好となり、長時間の使用においても何らの疲れもなく使用できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明によるアイマスクの裏面を示す裏面図である。

【図2】図1のA-A線による拡大断面図である。

【図3】図1のB-B線による拡大断面図である。

【図4】従来のアイマスクの要部を示す断面図である。

【符号の説明】

1 裏面当接体

1A 外縁部

1B 自由縁部

2 本体部

Y 裏面

3 小孔

30 眼部

【図1】

<省略>

【図3】

<省略>

【図4】

<省略>

【図2】

<省略>

特許公報

<省略>

<省略>

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